転職するときに誰しも悩むのが、「志望動機」ではないでしょうか。
「医療情報技師として転職したい。結局、志望動機に何を書けばいいの?」
「どんな志望動機なら、相手の琴線に触れるんだろう?」
今回は、そんな疑問に答えます。
大前提!「すぐに辞めないこと」をアピールする
転職サイトや書籍では、いろんな転職ノウハウが紹介されていますが、大前提として採用側が求めているものは「すぐに辞めないこと」。どんな採用担当者も、この点を頭に入れながら書類選考や面接に臨みます。
「そんなの簡単なことじゃないか」
そう思う人ほど要注意です。
「すぐに辞める」というと、安月給できついからとか、職場に馴染めなかったとか、そういった理由を思い浮かべるのではないでしょうか。「自分はタフだからそんな簡単には辞めないさ」と思うかもしれません。ところが実際は、こんな理由で辞めていく人も多いんです。
「いざ働いてみたら、話と違う仕事をやらされたから」
本人としては、真っ当な理由だと思っているに違いありません。そんないい加減な職場なら辞めるべきだ、と考える人は多いでしょう。
ところが、病院に限らず、職場の人事というものは予定通りには行かないもの。
「最初はこの仕事をやってもらう予定だったけど、急遽人が足りなくなったからこっちの仕事を頼む」ということだってあるわけです。中小規模の病院であれば、ギリギリの人数で回していることも多いので、余計にそんな状態になりがち。
「組織というものは、計画的に人を採用して適切な人員配置をしているはずだ」と思いがちですが、実はそうでもありません。それが理想ですが、そんなキレイには行かないものです。
募集内容と違う仕事をさせられたら、本人は「約束が違うんだから辞めて当然だ」と思うでしょうが、採用側からすれば「やっぱり、すぐに辞める人なんだな」という印象が残ります。人事にとっても予測できない事態が起こり、やむを得ず人員配置の計画を変更しているかもしれません。
「人が足りなくなったから、取り急ぎ募集をかけよう」
そんな行きあたりばったりな本音を隠しつつ、採用候補者を見ていることもあるわけです。
すると、内心こう思いながら選考をします。
「仮に、募集したのと違う仕事になっても居続けてくれるだろうか」
「将来は別の仕事に就いてほしいから、こんな質問もしてみるか」
採用側の真意を汲み取れなければ、こんな揺さぶりをかけられたときにふるい落とされてしまう可能性が高いのです。
以上のことから、「すぐに辞めない人」だということを感じさせることが大切と言えます。
私がオススメする志望動機のフレーズ
ここからは、「すぐに辞めない人」を匂わせられるフレーズを3つ提案しますので、参考にしてみてください。
「地元の○○でずっと暮らしたいから、地域に欠かせない病院に貢献したいんです」
都会から地方へUターンした場合に、オススメするフレーズ。医療情報技師である以上、「病院のIT化に貢献したい」のは当たり前なので、「地元を大切にしている。だから帰ってきた」感を加えています。
「ずっと地元で暮らしたい」ということは、そこに根を張る覚悟が出来ているということ。根を張るということは、嫌なことがあっても逃げず、そこに居続けることを意味します。辛かったらすぐに辞めるような「弱さ」を感じさせません。
また、地元愛を感じると人は親近感を覚えますし、なんとなく「イイヤツ感」も出せます笑。
Uターンした理由は人それぞれあるでしょうが、ネガティブな理由はたとえ事実にしても、正直に話すのは避けるべきです。
採用側は
「なぜこの人はUターンしてきたのか?」
を考えながら選考しますので、「仕事が大変だったから」とか「都会の暮らしが合わなかったから」とかネガティブな言葉を使うと、「うちで辛いことがあったら辞めそうだな」と思われてしまい、マイナスイメージにつながります。
「都会で暮らすうちに、地元の良さを身に沁みて感じました。それで帰ってきたんです」
といった言い方のほうが、はるかに好印象になります。
「コロナ禍で医療の使命に強く感銘を受け、IT化の役に立ちたいと思いました」
2020年から始まったコロナ禍は長い間、人々の安息な生活を奪いました。未だに医療機関ではコロナを中心にさまざまな感染症の治療に追われており、世間から見た医療従事者は「大変だな」という認識でしょう。
今はそんな大変な時期ですから、病院は敬遠される転職先です。そんななかで転職を希望する人は目立ちます。
「この大変な時期にわざわざ希望してくるとは・・・この人は本当に病院に転職したいんだな」と本気度が伝わり、どんなに熱心なアピールよりも人事の印象に残るはずです。
コロナ禍以前なら、「医療の必要性を強く感じています」と言っても「まぁ、病院で働きたいならみんなそう言うしなぁ」としか思われません。
コロナ禍の今を逆手に取った、志望動機です。
「エンジニアの枠に囚われず、貴院のさまざまな課題解決に貢献したいです」
医療情報技師と言うと、システム管理の仕事がメインと思いますよね。実際そのとおりなのですが、採用側の本音はこうです。
「病院の経営に役立つ統計資料などを提案してくれたら助かるな」
「いろんな部署と関わって、課題を解決していってほしいな」
多くの人は、「医療情報技師の仕事に魅力を感じた」「IT業界での経験を生かしたい」というアピールをするでしょう。普通に聞こえますが、ありきたりな志望動機で、他人と代わり映えしません。
嫌な言い方をすれば、「自分がこうしたい!」という希望を述べているに過ぎません。新卒なら熱意が伝わるかもしれませんが、中途採用に熱意は求められていませんので、「うちは、あなたがやりたい仕事をする場所じゃないんだよね」と思われてしまう可能性があります。
「エンジニアのスキルが活かせるなら、いろんな仕事を引き受けますよ」という相手の利益を考えたメッセージが込められれば、「うちの役に立ってもらえそうだな」と感じてもらえるはずです。
また、「いろんな仕事を引き受ける=思い通りの仕事が与えられなくても腐らずにやる」と受け止められるでしょうから、「働く意欲のある人」を匂わせることができます。
志望動機にスキルは最重要ではない
以上が、私がおすすめする志望動機のフレーズです。
ここまで読んで気付いたと思いますが、「どんなスキルがあるか」は一切アピールしていません。
なぜなら、スキルは最重要ではない、と考えるからです。
医療情報技師の求人情報を見れば分かりますが、採用側がスキルを求める場合は「医療システムの開発経験○年以上」「医療情報技師の経験○年以上」などと具体的に指定しています。経験年数があれば、ある程度の能力が備わっているとみなせるからです。
この仕事は、IT業界と同じで能力や経験が物を言う世界。「こういうスキルがあります」と主張されても、本当に備わっているかどうかは選考の段階で判断できないので、経験年数で見ていることが多いんです。
逆に専門的な経験がなければスタートラインには立てず、おそらく書類選考でふるい落とされるので、いくら志望動機が立派でも採用には進めません。
一方で、「情報処理の資格を持っていること」「ExcelやAccessのVBAが扱えること」といった条件を提示している場合もあります。これなら、大抵のSEは持ち合わせているでしょう。応募のハードルが低めなのですが、それだけに他人との差別化もしづらいので、これらのスキルがあったとしてもアピールポイントにはならないわけです。
それに、これだけのスキルでは何が出来るのか見極めるのも難しいところです。それどころか「それくらい、あって当たり前でしょ」というレベルのものをアピールされても、「あなたと同じレベルの人はたくさんいるよ」と思われるのがオチ。
採用担当者はたくさんの応募者の中から選ぶわけですから、「あの人だけは目の色が違ったな」とか「あの人に来てもらいたいね」といった印象をいかに持たせられるかが勝負になります。
SEを経験している人同士なら、持っているスキルが月とスッポンほど違う、なんてことはそうそうないですから、立派な経験がなくても気後れすることはありません。
スキルは、仕事に就いてから磨けばいいだけの話です。
採用担当者に「刺さる」志望動機をよく考えて、転職を勝ち取ってほしいと思います。