病院に勤める医療情報技師が年収を上げるには、昇進するか、他病院への転職という道があります。定年までのキャリアを見据えるなら昇進がおすすめですが、若いなら転職のほうが適しています。その理由について説明します。
昇進がおすすめできる人
情報システム部門のトップは課長職がほとんどです。ほとんど、と言ったのはそれ以外は残念なことに課長のポジションすら存在せず、事務員の1人として終わる可能性もあるためです。病院における情報システム部門は発展途上にあり、中小の病院では専門部署がないところもあるのが現状です。このため、そのような病院で医療情報技師として出世する道は無いに等しいと言えます。転職を考えるべきでしょう。
さて課長職以上の役職となると、事務部や企画情報部などの部長クラスを狙うコースになります。システム管理の仕事だけをしたい人は課長までのキャリアに留めるのが吉となります。課長職にもなれば相応の昇給額と役職手当がつくはずですが、中小規模の病院では思ったより年収が上がらないと感じる人もいると思います。
部長職になるには医療情報技師のスキルだけでは不十分です。総務や会計の分野に精通していたり、診療報酬や施設基準に詳しかったり、財務諸表の作成や経営分析に詳しかったりなど、部署全体を包括的に俯瞰できる知識も必要になります。部長は組織の意思決定に関わる重要な立場であるため、高度な知識のみならず、近隣病院や地域コミュニティとのパイプなど、横の繋がりも不可欠。
私の周りにいる部長クラスはみな、独自の情報収集基盤を築いており、いざというときに重要な情報を引き出せる経路があります。またその地域において広範囲なコネクションを持っており、他病院の人事や経営状況、ゴシップネタまで、誰に聞いたのか問いただしたくなるほどの情報通。ネットで収集できる類の情報ではなく、長年その場所で生活し仕事をしてきた中で構築した賜物と言えます。
このようなスキルは一朝一夕で身につくものではなく、機械を相手に仕事をする医療情報技師にとっては難しい領域かもしれません。難易度は上がりますが不可能ではなく、実際に私の知り合いにも医療情報技師から事務長への出世を果たした者がいます。こうしたキャリアアップも視野に入れておくのも一つの手です。
一般的に課長職への昇進は早ければ早いほど、生涯年収が高くなります。組織にもよりますが、たいていは昇進すると毎年の昇給幅が上がり、勤務年数とともに基本給が上昇します。毎月の給料には役職手当が上乗せされ、基本給が上がることでボーナスも上がるため、年収の上がり方も大きくなります。今の職場で年収を上げたいなら、まずは課長への昇進を目指すべきでしょう。
転職がおすすめできる人
いっぽう課長への昇進を果たしても年収が低く見込まれる場合や、キャリアアップの可能性が見えない場合は、他病院への転職を考えるべきです。転職は若いほど有利なので、見切りをつけるなら早いほうが得策。
高収入を目指すなら、急性期や400床以上の大病院がおすすめです。休日・夜間の呼び出しなどある程度の激務は付き物ですが、運営母体が大きい組織は待遇が良く、時間外等の手当もしっかりしているので年収アップが見込めます。同じ事務員でも、大病院と中小とでは待遇がまるで違います。
しかし大病院は人気で求人への応募が殺到するため、年齢が高くなるほど挑戦のハードルが上がります。20代か、遅くとも30代のうちに狙うのが得策でしょう。
しかし40代以降でもチャンスはあります。医療情報システムの導入や運用経験を売りにする方法です。40代以降の中途はキャリア採用であり、経験を買われることが多いです。現在の職場でシステム導入や更改プロジェクトを数多く手掛けた実績を積むと、信用度が上がります。「◯◯病院の電子カルテ導入プロジェクトでリーダーを務めた」「プロジェクトの推進には自信と実績がある」と言えば、多くの面接官を説得できるでしょう。冒頭で触れたように、病院には情報システム部門すら存在しないところも多いため、病院では電子カルテの運用を一手に任せられる人材が重宝されます。