医療情報技師を応援するブログ

医療情報技師の仕事について現役の職員が語ります。

医療事務の経験が、新米の医療情報技師に教えてくれたこと

※当ブログでは商品・サービスのリンク先にプロモーションを含みます。

 

医療情報技師の仕事に就くうえで役立つのが、医療事務の経験です。医療情報がどのように処理され、医療行為や病院経営に活かされているかを知ることが、院内のシステムを設計するのに必要だからです。

 

私は元SEの身から未経験で病院に転職し、初めは医療事務の仕事に就きました。そこで、私がその経験から学び、今も医療情報技師の仕事に役立っていることを紹介します。

 

医療従事者と対話できる知識が身についた

もっとも大きな財産が、医療従事者と対話できる知識が身についたこと。この仕事に就いた当時は、医療の知識など皆無。レセプトの「レ」の字すらわかりませんでした。医師や看護師の言っている内容が意味不明で、何を求められているのかも理解できず、「医療事務として失格じゃないの」などと罵倒されたこともありました。

 

医療事務の経験を積むことで彼らと対等に話し合えるようになり、業務もスムーズに回せるようになりました。いちいち上司に相談して指示を仰ぐ必要がなくなり、自らの判断で物事を進められるようになったのです。


思いがけない収穫として、彼らとの心理的距離も縮まりました。同じ土俵で話し合いができる相手として見られるようになり、それまでは殺伐としていた空気感が柔らかくなったのです。

話の通じない相手との会話は大きなストレスになります。相手の目線に合わせることはストレスを軽減させ、スムーズなコミュニケーションにつながるということを教えられました。


診療報酬が理解できるようになった

診療報酬が理解できるようになったのも大きな成果です。病院の収益は診療報酬に左右されるため、処置一つするにも、新たな設備投資をするかどうかも、診療報酬次第で決まります。医療事務には、「この処置をすればいくら稼げるのか」「この算定を得るために必要な条件はなにか」など、さまざまな立場の医療スタッフから問い合わせが来ます。医療事務はこれらに答えられなくてはなりません。

 

その知識が、医療情報技師のシステム運用にも活きてきます。システムの仕様理解、運用ルールの取り決め、マスタの作り込みなどで診療報酬の知識が必要とされます。
診療報酬が理解できていないと、システムの仕様や運用が、要件を満たしているかどうかの判断がつかないことがあります。「診療報酬上、このように決められているからこうしてほしい」という要望をメーカーに伝えると説得力が増すわけです。

 

医療従事者の共通言語である診療報酬を理解することは、医療情報技師の仕事をこなすうえで不可欠というだけでなく、交渉の武器としても使えるということを学びました。

 

▼医療事務の資格を取ろうと思っている方は、こちらで私が一発合格した時の体験談をまとめていますのでぜひ参考にしてくださいね。

※私が運営する雑記ブログへジャンプします。

whitefox21.hatenablog.com


現場の動きが把握できるようになった

最後に挙げるのは、現場の動きが把握できるようになったことです。システムの運用ルールを取り決める上では、いつ・誰が・どのように・何をするか、を詳細に詰める必要があります。それがわからないと机上の空論になってしまい、システムの安定稼働に支障が出るだけでなく、医療従事者からクレームをもらう原因にもなります。青島刑事のように「事件は会議室で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ!」と怒られる羽目になります。

 

医療事務は会計をはじき出すために、さまざまな部署と連絡を取り合い、必要な情報を集めます。それを通じて、どこの部署が何をし、どう医事課へ伝達するかが分かるため、医事課は病院全体の動きを俯瞰する立場にあるわけです。これはそのまま、システムの運用ルールを決めるための基礎知識となります。

 

最初のうちは覚えることが多いため苦労するかもしれませんが、いずれ慣れます。そして全体の流れが把握できるようになると、現場の医療スタッフと同じ土俵で話し合いができ、密なコミュニケーションが取れるようになります。

 

余談ですが、医療情報技師はよく、院内での立場は下だと言われます。しかしながら、会議室で検討するばかりでなく、現場に赴いて職員の話を聞いたり、彼らと同じ視線で物事を見ようとする姿勢でいれば、対等な話し合いができるようになる、と私は考えています。それはつまり、対等な関係を構築できるということです。現に医療情報技師として働く私は、職員と程よい距離感(近すぎず遠すぎず)を維持できています。

 


以上が、私が5年の医療事務の経験を経て学んだことです。

 

端的にまとめると、医療事務の仕事をすることによって、私は医療従事者の仲間入りができたと思っています。やはり現場を知らずに仕事はできませんし、知ろうとしないと職員との溝が深まるばかりです。どんな良いシステムを入れようとしても絵に描いた餅で終わってしまうかもしれません。彼らと対話し、ニーズを引き出し、それに応えるシステムを運用することが医療情報技師に求められる仕事ではないでしょうか。