地元に帰りたい。けれど仕事がないから帰れない。
そんな方に紹介するのが、「病院」です。病院なら、読者の地元にもきっとあるから。
一度都会に出てから帰るということは、地元に根を張って生きていくことを考えているでしょう。病院は安定した職場ですから、転職する仕事としておすすめできます。
私は医療情報技師として病院で働いていますが、若い頃は東京でIT企業に勤めていました。そこでこの記事では、SEが地元に帰って仕事に就く方法として「医療情報技師」を提案し、具体的な転職活動の方法についても紹介します。
病院をおすすめできる、3つの理由
SEからすれば、病院なんてあまりにかけ離れた業種で畑違いだ、と思うかもしれません。しかし、そうではないということを強調しておきます。元・IT企業勤務の私から見た、病院がおすすめできる理由を3つ挙げます。
病院がおすすめできる3つの理由
・地元で働ける
・定年まで安心して働ける
・公務員よりハードルが低い
以下、順に説明していきます。
地元で働ける
田舎であればあるほど、残念ながら仕事の幅は狭くなっていきます。IT企業で働きたくても、地元には無いことも多々あるでしょう。しかし、病院ならたいていの地域に存在します。仕事に就けるのです。
よく、地元に帰れない理由として「仕事がない」ことが挙げられます。確かに、100%希望に叶う仕事はないでしょう。しかし、視野を広げることで仕事に就くことは十分可能です。
医療情報技師は、病院で稼働する電子カルテシステムを保守する仕事。システムトラブルが起きたときに解決したり、パソコンの操作方法を職員に教えたり、LANケーブルやWiFi環境を整えたりするのが主な業務です。
まったく畑違いの仕事に就くのは、さすがに勇気が要ります。イチからいろんなことを覚えなければなりませんし、それまで培ったスキルを活かせないのは何よりもったいないこと。
しかし医療情報技師なら、IT企業の経験が生かせます。
病院では、IT企業以上にSEのスキルが求められることはまずありません。なぜならほかのSEとは違い、あまり開発をやらないから。そのため、「IT業界を抜け出したい」「SEをやめたい」と思っている人には、まさに異業種へ行ける格好の手段です。
定年まで安心して働ける
病院は、特性や規模にもよりますがだいたい平均年齢が高めです。看護師は50代もザラですし、医師にいたっては70代すら現役で働いています。SEの世界に比べれば、到底考えられない年齢層と言えます。
私のような院内SEにおいても20代はあまり見かけず、30代以降が中心。若者集団であるIT企業とはまったく違います。むしろ正反対ですね。私の職場でも定年近い上司がいるので、将来はその人と同じポジションになるだろうことが想像できます。
IT企業にいたころ、私の周りには定年近くの社員など管理職しかいませんでした。年齢を重ねるに連れ、「管理職になれなかったら自分はどうなる?」と思っていましたね。
地元に根を張って暮らすなら、「定年まで」、「安心して」働ける職場に就きたいでしょう。そう考えている方にとって、病院はうってつけです。
公務員よりハードルが低い
地元に帰って安定した仕事に就こう、と思ったら真っ先に思い浮かべるのが「公務員」ではないでしょうか。役所ならどんな田舎であっても必ず存在しますから、目指す道としてはこの上ない理想です。
説明不要でしょうが、公務員は険しい道のり。難しい公務員試験を突破しなければならず、年齢の制限もあります。経験が買われる社会人採用は数人程度の狭き門。厳しい競争を勝ち抜いた猛者だけがたどり着ける道です。
しかし、病院はもう少しハードルが下がります。
院内SEになる場合は、一律同じ試験を受ける公務員と違って、SEのスキルが評価されます。病院が院内SEに求めるのは、当然ながら「SEのスキル」だからです。病院が要求するスキルをすでに持っているという点で、SEは有利です。
地元への貢献になる
病院は、その地域で安心して暮らすために欠かせない存在です。そのため、病院で働くということは、地元へ貢献することにも繋がります。
SE時代の私は、仕事にやりがいを求めていました。「やっていて楽しい仕事かどうか」が優先順位として高かったわけです。いっぽう病院のSEは、楽しさよりも「使命感」で仕事している感じがします。おそらく、医療従事者の多くがそう感じているのではないでしょうか。
例えば電車が毎日定刻通りに運行できているのは、深夜に作業員が定期的に点検しているから。誰も見ていない時間に、人知れず仕事をしている人が、人々の生活を支えていますよね。
同じように院内SEは、24時間365日稼働し続けなければならないシステムを、当たり前のように動かし続ける。ある日突然システムダウンしないように、トラブルの予兆を見つけたり、障害の目を摘んだりする。障害が起きても、応急措置できる体制を作っておく。そうした役割を担います。
誰の脚光も浴びない地味な仕事ですが、毎日の診療を支え、ひいては地域の人々の暮らしを支えます。地元に帰って何か役に立ちたい、と思う人にも病院がおすすめできます。
帰ろう、地元へ!
今と同じ仕事を地元でやりたい、という気持ちは誰しも同じですが(私もそうでした)、現実的になかなか難しいもの。だからこそ、地元に帰る踏ん切りがつかないのだと思います。
転職を経験した立場から言わせて頂くと、地元に帰るなら「何を得て」「何を捨てるか」をはっきりさせないと後悔します。
私が地元に帰ってきて得たものは、「家族や友人との時間」「はっきり思い描ける将来」でした。
家族や、昔から仲の良い友人たちと過ごす時間は、毎日の暮らしの中でかけがえの無いものとなっています。また、親戚も含めてみな地元にいるので、これから先どう付き合っていくか、老後の生活までも思い描けるようになりました。
反対に捨てたものは、「都会にしかない刺激」「自分のやりたい仕事」でした。
地元に帰った今も、いろんな娯楽が味わえる東京の楽しさや、やりたい仕事で充実していた日々を思い返すことがあります。出張で東京に行くと、やっぱり東京は楽しいなぁと思ったりもします。けれど、これは自分が選んだ結果ですから後悔することはありません。
「都会と地方、どちらが良いか」ではなく「自分がどちらを選ぶか」を主体的に決めるべきと言えます。