私は数年間東京のIT企業に勤めたあと地元へ帰ったのですが、どうしても譲れなかったのが「SEがしたい」という気持ちでした。地元は田舎なので、ただでさえ仕事が少ない町。選べるほど仕事のバリエーションは多くありません。IT企業は数少なく存在するも、常に募集がかかっているわけではないので応募したくてもできない状態でした。
それでも、好きじゃない仕事を嫌々やりたくはなかったので、ようやくたどり着いたのが病院のSE(医療情報技師)だったのです。実際にこの仕事をしたら、これまでの仕事にはなかった新たな「やりがい」を感じることができ、10年以上続けられるモチベーションになりました。
そのやりがいは医療情報技師ならではのものと言えますので、紹介していきます。
やりがい① 仕事に誇りが持てる
世の中の仕事はどれも必要とされるものだと思いますが、病院で働くと特に「社会になくてはならない仕事をしている」と感じ、誇りが持てます。「病院で働いている」と言うと、誰でも「立派な仕事についている」という印象を持つでしょう。
また、自負できるだけでなく周囲からも評価されます。堅実な仕事をしている、というふうに家族や親戚から見られるので、仕事の必要性を実感できます。将来の心配をされることもありません。
仕事に誇りを持てて、かつ周りからも評価されることは、モチベーションの維持に繋がります。
私は東京で働いていた頃に東日本大震災を経験したのですが、その時に感じたのが「自分の仕事は、いったい誰の、何のために役立っているのか?」でした。それまでは「好きかどうか」で仕事をしていたのですが、社会的使命を考えるようになったわけです。この仕事をしていると、「自分がやらねばならない」という使命を感じられます。
またコロナ禍も、仕事への誇りを再確認した出来事でした。コロナ禍以降、私の周りでも勤め先が倒産したり、会社の業績が落ちて将来に不安を感じたりした人が続出しました。会社は時代のニーズや社会の変化に左右されるものですが、医療に求められるニーズはいつの時代も変わりません。これから先、需要がなくなって仕事に困る、ということは考えられない業種。それだけ世の中に必要とされている仕事をしていることに、誇りを持つことができました。
やりがい② 頼りにされる
医療情報技師の仕事は、電子カルテシステムを安定稼働させることです。故障時に復旧させたり、トラブルを未然に防いだり、職員からの問い合わせに対応したりします。いわば職員が「お客」ですので、物事をうまく解決できると感謝されたり、頼りにされたりします。
私がシステム開発の仕事をしていたときは、打ち合わせ以外は一日中PCに向かっていることがほとんどで、ユーザーと直接触れる機会はまったくありませんでした。それも企業向けの業務システムでしたので、システムがどんなふうに使われているのかを見たことがなく、使ってみての反応を感じることもなく、仕様を淡々とプログラムに落とし込む感じでした。
医療情報技師はあまり開発をやりませんが、医師や看護師の声を聞いてシステムベンダーと調整し、電子カルテに反映させていきます。「これで仕事が捗るよ」「困っていたから助かったよ」という感謝の声を直接聞いたときには、達成感が得られますね。
現場の要求は厳しいものも多く、関係者の間を何度も行き来して、異なる意見を擦り合わせていくことになります。職員とベンダーとの板挟みになりつつ、調整役としての役割を果たし要求を実現できたときには、やりがいを感じます。
やりがい③ 裁量が大きい
医療情報技師は裁量が大きい仕事です。自分が一番システムに詳しい立場なので、導入するシステムの検討・比較・選定、スケジュール調整、価格交渉などを担います。システム管理全般を背負うわけですから、責任とプレッシャーを感じる反面、自分の裁量で決めることができます。
システムの導入は病院の予算や事業計画に沿って進めていくわけですが、自分が専門家の立場なので、自分が良いと主張したら予算や方向性が組織のものと合いさえすればだいたい通ります。企画から運用までのプロジェクト全体を自分がリードできるのは、とてもやりがいがあります。