医療情報技師を応援するブログ

医療情報技師の仕事について現役の職員が語ります。

医療情報技師の資格を取るメリット

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chatGPTによる要約 医療情報技師の資格は病院において有益であると論じられています。まず、病院の収益向上に寄与し、診療報酬制度の改正により診療録管理体制加算が求められ、医療情報技師の知識が必要とされています。また、サイバーセキュリティの法的要件が追加され、病院において情報システムの専門家が必要不可欠となっています。さらに、病院機能評価では医療情報技師の配置が望ましいとされ、その認定は患者にとって選択基準となります。資格取得は採用時の評価ポイントとなり、学会への参加は専門知識の向上に寄与し、資格更新にも繋がります。医療情報技師の存在は、病院、個人、学会にとって有益であり、資格の活用が重要であると強調されています。

 

医療情報技師の資格は、病院でこの仕事をするうえで必須の資格だと私は考えています。ところが資格を活用するシーンがあまりないことから、「頑張って資格を取っても意味ない」「資格がなくてもSE業務はできるから取るだけムダ」と思っている方もいます。

今回は、医療情報技師の資格を取ろうと思っている方、もしくは更新を悩んでいる方(注:医療情報技師は5年毎に更新が必要)向けに、資格を持つ意味や必要性を説明します。

 

病院の収益に貢献できる(病院にとって有益)

病院は診療報酬制度に基づいて収益を得るわけですが、その中に「診療録管理体制加算」があります。その要件が令和4年4月に改正され、400床以上の保険医療機関に対して下記が求められるようになりました。

 

  • 専任の医療情報システム安全管理責任者の配置
  • 職員を対象とした情報セキュリティ研修(最低年1回)の実施

 

「専任の医療情報システム安全管理責任者」とは、事実上 医療情報技師を意味すると解釈してよいでしょう。具体的な資格が求められているわけではありませんが、専門知識を持たない職員が「専任」として責任者を務めるのは無理がありますし、現実的にもシステムの監視や管理業務は務まらないはずです。

職員を対象とした情報セキュリティ研修についても、研修を行えるだけの知識量は医療情報技師でなければ持ち合わせるのは困難と言えます。

 

現状、医療情報システムの管理を医事課や総務課の職員が兼務で行う病院は実はたくさんあります。専任の医療情報技師を置く人的・経済的余裕がないのと、そもそも病院がその必要性を感じていなかったことが背景にあります。

 

多くの病院が、世間のサイバー攻撃や情報漏洩事故は対岸の火事だと高をくくっていたわけですが、2021年につるぎ町立半田病院、2022年に大阪急性期・総合医療センターがランサムウェアの被害を受け、数ヶ月にわたり診療が停止したという重大なセキュリティ事故が発生したことから、その姿勢が一変しました。早急に手を打たなければならないとしてまず国が動き出し、厚生労働省が先の診療録管理体制加算に要件を追加するなど、医療情報システムを守る体制づくりを急ピッチで進めています。

 

病院の収益を左右する診療報酬が改正された以上、診療録管理体制加算を算定する病院はこの2つの要件を満たさなくてはなりません。私はこれは序章であり、これから情報セキュリティに関する要件が医療機関に厳しく求められるようになる、と考えています。なぜなら、医療法が改正されるからです。

 

医療法施行規則の一部を改正する省令

病院、診療所又は助産所の管理者は、医療の提供に著しい支障を及ぼすおそれがないように、 サイバーセキュリティ (サイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)第二条に規定するサイバーセキュリティをいう。 ) を確保するために必要な措置を講じなければならない

(インターネット版官報 令和 5年3月10日 本紙)

 インターネット版官報

 

(定義)

第二条 この法律において「サイバーセキュリティ」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式(以下この条において「電磁的方式」という。)により記録され、又は発信され、伝送され、若しくは受信される情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置並びに情報システム及び情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保のために必要な措置(情報通信ネットワーク又は電磁的方式で作られた記録に係る記録媒体(以下「電磁的記録媒体」という。)を通じた電子計算機に対する不正な活動による被害の防止のために必要な措置を含む。)が講じられ、その状態が適切に維持管理されていることをいう。

 サイバーセキュリティ基本法 | e-Gov法令検索

 

上記の通り、令和5年4月からは医療機関においてサイバーセキュリティの確保が義務化されました。法律で決められたことなので、診療報酬の加算を算定するかどうかに関わらず、どの病院やクリニックも義務としてやらねばなりません。何をどうすればいいのか、専門家でなければ対策は難しいでしょう。

以上の事柄は、まさに医療情報システムの専門知識を有する医療情報技師の役割です。

 

病院機能評価において評価される(病院にとって有益)

病院で働いたことのない方にとっては、「病院機能評価」が何か分からないと思いますので、まずこれについて説明します。

病院機能評価とは、病院を第三者の目で評価し、質の高い医療を提供する医療機関として認定する活動のことです。公益財団法人日本医療機能評価機構が実施しており、一定の水準を満たす医療機関として認定されれば、「認定証」が発行され、これを掲示することができるようになります。

 

病院機能評価とは

病院の質改善活動を支援するツールです


病院機能評価は、我が国の病院を対象に、組織全体の運営管理および提供される医療について、当機構が中立的、科学的・専門的な見地から評価を行うツールです。

当機構は、病院機能評価を通じて、病院の質改善活動を支援しています。

 

 https://www.jq-hyouka.jcqhc.or.jp/accreditation/outline/

 

患者にとっては、この「認定証」が病院を選ぶ一つの判断基準になります。

 

▼認定された病院に与えられるシンボルマーク。ホームページに記載している病院もたくさんありますので、興味があれば、知っている病院をぜひチェックしてみてください。


もちろん、「認定されていない=質が低い病院」ではありませんので、誤解しないよう注意してください。

よく、会社のCSR(Corporate Social Responsibility。企業の社会的責任)の一環として、「ISO○○○を取得しました」などと謳っているケースがあります。ISOを取得することで、「企業に求められる社会的責任を果たしていますよ」とアピールするわけです。それに似ています。

この認定を受けるためにはさまざまな評価基準をクリアしなければならないのですが、その基準の一つで「医療情報技師の配置が望ましい」とされているのです。

 

病院機能評価の評価要件に「医療情報技師の配置が望ましい」ことの明記

 病院機能評価の評価要件に「医療情報技師の配置が望ましい」ことの明記

 

「医療情報技師を配置していること」は、「専門知識を持つ技術者が、電子カルテをはじめとした情報システムを適切に管理している」とみなされるわけです。

病院機能評価の受審に関わったことのある方なら、これは頷ける内容だと思います。

 

近年では、医療機関を標的としたサイバーテロが起きており対策が急務となっていますし、医療情報システムは年々高度化・複雑化する一方です。また、マイナンバーカードによる保険情報の確認やはんこ廃止によるデジタルトランスフォーメーションなど、官民が足並みを揃えてデジタル化を進めていく時代に来ています。

 

それらを、専門知識を持たない事務職が兼務するには限界があります

すなわち、医療情報技師の存在が必要になります。

 

患者から「マイナンバーカードで保険情報を確認してほしい」と求められたら、病院としては対応せざるを得ません。「うちはやらない」と決め込んだところで、患者のニーズを汲めなければいずれ患者は他院へと流れ、淘汰されていくでしょう。

以上のことから、医療情報技師の資格は病院に利益をもたらすもの、と言えます。

 

採用時の評価ポイントになる(個人にとって有益)

次に、採用時の評価ポイントになることが挙げられます。

 

病院の情報システム部門の求人を見ると、「医療情報技師の資格を有していること」を条件に掲げているのを見かけます。この資格を持っていることは、医療情報システムに詳しいことの証明だからです。

もちろん、資格がなくても情報システム部門の仕事はできます。基本情報技術者試験を持っていなくても、プログラムを書くことができるのと同じです。

 

しかし採用のことを考えたとき、医療情報技師を「持っている人」と「持っていない人」を選ぶとしたら、やはり持っている人を選ぶに違いありません。すでに上で述べたように、医療情報技師は今後多くの医療機関で必要不可欠な存在になっていくでしょうから、持っていると武器になります。

 

学会に参加するモチベーションになる(個人にとって有益)

最後に挙げるのは、学会に参加するモチベーションになることです。

 

医療情報技師の資格は、5年毎に更新しないと失効します。更新するためには、5年間のうちに50ポイントを取得する必要があり、学会に参加することでポイントがもらえる仕組みになっています。

 

学会では、他院の情報システム担当者の取り組みや、医療情報技師が知っておきたい旬の話題が紹介されるのでとても勉強になります。ポイント稼ぎで出席しようと思っていたら、テーマが面白くてつい聞き入ってしまうこともあります。

医療情報技師の仕事は、病院という建物の中で一日中パソコンを相手に仕事しますので、あまり他院の担当者と交流することがありません。

 

「これってほかではどんな風にやっているんだろう」

「他院の導入事例を知りたい」

 

と思っても、その機会がなかなかないわけです。そこで、この医療情報技師の学会が良い機会になります。

 

院内で解決すべき課題を一人で悩んでいるよりは、外に出ていろんな事例を学ぶ方が有益です。また、自分の企画を経営陣に通したいときも「○○病院さんではこのようにしています」と言えば説得力が増します。

 

医療情報技師の資格がなくても、学会に参加することは可能です。

しかし人間は先立つものがないと動けないもので(笑)、勉強のために学会に参加しようと思ってもなかなか重い腰が上がりません。ついつい、「今回は参加しなくていいや」と思ってしまい、サボっているうちに足が遠のく、なんてことになります。

「医療情報技師を更新しなくちゃ!」と思えば、学会に参加する意欲も湧いてきます。資格の更新がモチベーションにつながるわけです。


また、学会は都道府県内だけでなく全国規模でも開催されます。年に一度、4~5日間に渡って開かれる連合大会の規模は大きく、全国の事例が学べる絶好の機会です。

 

大切なのは医療情報技師の資格を取得したあと

以上の4点が、私の考える医療情報技師を持つ意味です。

 

資格を取ることに躍起になっても仕方がなく、大事なのはそれをどう活かすか。学会の出席等で得た知見を職場で実践することに意味がありますので、その視点で資格を更新するか判断すべきだと思います。